45歳で看護学校に入学、その生活を本に書いてベストセラーを狙い印税生活を夢見ている ナースの日記です。
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「頑張れば、良い事があるよ。いっしょうけんめい頑張れば、必ず良い事があるよ」
辛い時はいつも、亡き父が夢で私を励ましてくれた。
2年生になると本格的専門分野の勉強が主になる。人の献体を使っての学習もある。まだ父を亡くして日の浅い私にはショックな解剖実習だった。ホルマリン漬けの献体は何とも言えない臭いがする。皮膚を開き、筋肉、血管、臓器と1つ1つ確認していく。今まで教科書(臓器が分かるように実際の人体を開いた写真)でしか分かっていなかった諸器官や臓器を実際の人間で確認していくのが目的である。肝臓、心臓といった臓器は実際に重さを量ったりする。
ここに来る遺体の中には遺族が引き取りたくないがために、献体として差し出されるケースも多いと聞いた。そのため病院からそのままこの施設にやって来る献体も多いと聞いた。医学を志す者の役に立つとはいえ、職員さんの話しを聞いて、何だかとても悲しくなった。
3年生になるとその殆どを自習する病院で過すことになる。
「実習は大変だよ。辛いよ。」
と、上級生に聞いていたため私は一計を図った。土用、日曜のアルバイトを始めたのである。とても厳しくて、バンバン怒鳴られる仕事がいい。
そこで、私には不向きな食品メーカーのレトルト製品を作って工場で働くことにした。早朝、4時30分起きで仕事に赴き、大きな鍋で食品を作り、袋詰めし、倉庫に積み上げる。寒いし、眠いし、何より力仕事である。加えて、何時までに完成させなくてはならないというノルマがある。怒鳴られ、時には焦りのあまり、火傷を負ったこともある。そんな、嫌で嫌で仕方ない仕事を経験すれば、辛いという実習も天国のように思えるのではないだろうか。
実は、私は打たれ弱いのである。根はお気楽な性格なのではあるが、面と向かって強い言葉を言われると、何日も何日も落ち込んでしまう。そこを何とかしないと実習を乗りきれないのではないか。恐怖が頭をもたげた。
思惑通り、今まであんなに嫌で辛かった実習が
「なんだ、アルバイトに比べたら何てことないじゃない。」
と思えるのだから、この方法は正しかったと言えるであろう。
実習が始まった。いままでは6時に自宅を出ていたが、5時半には出ることになった。冬の朝はまだまだ開けず、月や星が出ている時間だ。
病院では3週間毎に自習場所が変わる。内科、小児科、外科、循環器病棟、精神科、産婦人科、整形外科等順にまわって、それぞれ1~3人くらいの患者様を担当させていただく。
患者様のケアをするためには、まずその病態を勉強する必要がある。ドクターがどのような治療を実施しているのか、どのような薬品を処方しているのか、その副作用は何か。それらを考え、入院中、または退院後に予想される肉体的、精神的看護問題を抽出する。そしてその問題を解決するための、看護計画を立てる。長期目標と短期目標を設定し、その具体策をたててゆく。また、その具体策を施行する医学的根拠は何か。といったことをプランニングしレポートでまとめてゆかねばならない。
更に,その科ごと、患者様ごと、複数の問題があればその問題ごとに計画をたててゆかねばならない。そしてケアを実施し結果はどうだったか、評価する。目標は達成されたか。達成されなければ、なぜ達成されなかったのか考え、計画を修正し再実施する。
私は勉強不足と技術の未熟さで、何度も悔しくて泣いた事がある。患者様に申し訳なくて、泣いた事もある。自分との戦いの日々だったと思う。患者様はこちらが学生だからなどとは関係ないのだ。
「点滴が終わりました」
「トイレに行きたい」
等言われてもその方の病態が分からなければ何もできない。安静度が分からなければ介助の方法も分からない。
ましてや、まだ資格もない学生の身、終了した点滴のクレンメ(滴下を止めるもの。終了して長くそのままだと血液が逆流して固まってしまう。、続けて点滴を施行する必要のある場合は早く止めないと再度注射針を刺し変えねばならないことにもなる)ひとつ止める事も出来ない。
だが、患者さんにとってはそんな事は関係ない。受け持ちの患者さんでなくても、声を掛けられる。自分独りで対処できそうな時は、カルテを見て安静度(どのくらい動いて良いと石かた指示がでている)や病名、治療方針を確認してから行動する。対処が無理な場合は担当の看護師さんに報告する。
ところが、この看護師さんがなかなか見つからない。他の患者さんの処置をしていたりする。
「今すぐ報告すべきか、否か。この場所で報告しても良いかどうか」
カルテを見て判断するのだが、勉強不足の身とて、なかなかスムースにいかない。
ある時、緊急に報告せねばならない事態に遭遇した。受け持ち患者さんの腕が腫れていたのだ。点滴漏れではないかと思った。そこで看護師さんに報告するのだが、看護師さんならだれでもいいかというと、そうではない。担当の看護師さんを調べ、その人に言わねばならないのだ。担当の看護師さんが見つからないので、他の看護師さんに報告する。ところが、
「私の担当じゃあないわよ。○○さんに言ってよ。今、手が話せないのよ!」
と、語気が荒い。
胸がドキドキする。泣きたくなる。
「患者さんのため何とかしなきゃ」
その後幸いにも担当の看護師さんが見つかり、報告できたのだが
「なんで誰でも良いから、早く看護師に言わないのよ!」
と怒鳴られる。
担当だって、担当でなくったって看護師さんなんかどこにもいなくて、見つからなかったじゃあない。
白衣の天使を夢見ていたのに。切なくてやりきれなくなる。
実習 ①
「頑張れば、良い事があるよ。いっしょうけんめい頑張れば、必ず良い事があるよ」
辛い時はいつも、亡き父が夢で私を励ましてくれた。
2年生になると本格的専門分野の勉強が主になる。人の献体を使っての学習もある。まだ父を亡くして日の浅い私にはショックな解剖実習だった。ホルマリン漬けの献体は何とも言えない臭いがする。皮膚を開き、筋肉、血管、臓器と1つ1つ確認していく。今まで教科書(臓器が分かるように実際の人体を開いた写真)でしか分かっていなかった諸器官や臓器を実際の人間で確認していくのが目的である。肝臓、心臓といった臓器は実際に重さを量ったりする。
ここに来る遺体の中には遺族が引き取りたくないがために、献体として差し出されるケースも多いと聞いた。そのため病院からそのままこの施設にやって来る献体も多いと聞いた。医学を志す者の役に立つとはいえ、職員さんの話しを聞いて、何だかとても悲しくなった。
3年生になるとその殆どを自習する病院で過すことになる。
「実習は大変だよ。辛いよ。」
と、上級生に聞いていたため私は一計を図った。土用、日曜のアルバイトを始めたのである。とても厳しくて、バンバン怒鳴られる仕事がいい。
そこで、私には不向きな食品メーカーのレトルト製品を作って工場で働くことにした。早朝、4時30分起きで仕事に赴き、大きな鍋で食品を作り、袋詰めし、倉庫に積み上げる。寒いし、眠いし、何より力仕事である。加えて、何時までに完成させなくてはならないというノルマがある。怒鳴られ、時には焦りのあまり、火傷を負ったこともある。そんな、嫌で嫌で仕方ない仕事を経験すれば、辛いという実習も天国のように思えるのではないだろうか。
実は、私は打たれ弱いのである。根はお気楽な性格なのではあるが、面と向かって強い言葉を言われると、何日も何日も落ち込んでしまう。そこを何とかしないと実習を乗りきれないのではないか。恐怖が頭をもたげた。
思惑通り、今まであんなに嫌で辛かった実習が
「なんだ、アルバイトに比べたら何てことないじゃない。」
と思えるのだから、この方法は正しかったと言えるであろう。
実習が始まった。いままでは6時に自宅を出ていたが、5時半には出ることになった。冬の朝はまだまだ開けず、月や星が出ている時間だ。
病院では3週間毎に自習場所が変わる。内科、小児科、外科、循環器病棟、精神科、産婦人科、整形外科等順にまわって、それぞれ1~3人くらいの患者様を担当させていただく。
患者様のケアをするためには、まずその病態を勉強する必要がある。ドクターがどのような治療を実施しているのか、どのような薬品を処方しているのか、その副作用は何か。それらを考え、入院中、または退院後に予想される肉体的、精神的看護問題を抽出する。そしてその問題を解決するための、看護計画を立てる。長期目標と短期目標を設定し、その具体策をたててゆく。また、その具体策を施行する医学的根拠は何か。といったことをプランニングしレポートでまとめてゆかねばならない。
更に,その科ごと、患者様ごと、複数の問題があればその問題ごとに計画をたててゆかねばならない。そしてケアを実施し結果はどうだったか、評価する。目標は達成されたか。達成されなければ、なぜ達成されなかったのか考え、計画を修正し再実施する。
私は勉強不足と技術の未熟さで、何度も悔しくて泣いた事がある。患者様に申し訳なくて、泣いた事もある。自分との戦いの日々だったと思う。患者様はこちらが学生だからなどとは関係ないのだ。
「点滴が終わりました」
「トイレに行きたい」
等言われてもその方の病態が分からなければ何もできない。安静度が分からなければ介助の方法も分からない。
ましてや、まだ資格もない学生の身、終了した点滴のクレンメ(滴下を止めるもの。終了して長くそのままだと血液が逆流して固まってしまう。、続けて点滴を施行する必要のある場合は早く止めないと再度注射針を刺し変えねばならないことにもなる)ひとつ止める事も出来ない。
だが、患者さんにとってはそんな事は関係ない。受け持ちの患者さんでなくても、声を掛けられる。自分独りで対処できそうな時は、カルテを見て安静度(どのくらい動いて良いと石かた指示がでている)や病名、治療方針を確認してから行動する。対処が無理な場合は担当の看護師さんに報告する。
ところが、この看護師さんがなかなか見つからない。他の患者さんの処置をしていたりする。
「今すぐ報告すべきか、否か。この場所で報告しても良いかどうか」
カルテを見て判断するのだが、勉強不足の身とて、なかなかスムースにいかない。
ある時、緊急に報告せねばならない事態に遭遇した。受け持ち患者さんの腕が腫れていたのだ。点滴漏れではないかと思った。そこで看護師さんに報告するのだが、看護師さんならだれでもいいかというと、そうではない。担当の看護師さんを調べ、その人に言わねばならないのだ。担当の看護師さんが見つからないので、他の看護師さんに報告する。ところが、
「私の担当じゃあないわよ。○○さんに言ってよ。今、手が話せないのよ!」
と、語気が荒い。
胸がドキドキする。泣きたくなる。
「患者さんのため何とかしなきゃ」
その後幸いにも担当の看護師さんが見つかり、報告できたのだが
「なんで誰でも良いから、早く看護師に言わないのよ!」
と怒鳴られる。
担当だって、担当でなくったって看護師さんなんかどこにもいなくて、見つからなかったじゃあない。
白衣の天使を夢見ていたのに。切なくてやりきれなくなる。
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